アマヤドリ本公演『月の剥がれる』出演者紹介!  
遠藤 杜洋 千葉県出身 1995年生まれ
大学入学時より演劇活動を始める。
アマヤドリにはこれが3回目の出演となる。
現在学業と演劇の両立のため悪戦苦闘中。
主な出演作は、アマヤドリ「すばらしい日だ金がいる」「ロクな死にかた」


─『月の剥がれる』という作品についての遠藤さんの考えをお聞かせください。

 僕がこの作品に初めて接したのは去年の『すばらしい日だ金がいる』の稽古中配布されたテキストとしてなんですが、それを通して読んで、その後映像も観て……かつて、アマヤドリはこんなとんでもない作品を演っていたのか、ということを思いました。正直。

 もっと言うと、僕は『月の剥がれる』を劇作家・広田淳一が救国のために書いたのかもしれないなとも思いました。戯曲として、現代の、同時代の日本人への広田さんなりの意見提出という側面があると思う。少なくとも、そこで提起されている問題は見過ごせないほどに大きい。もちろん劇中で行われていることを実際に実行しろ、とアジテーションしている作品ではないんですが、それにしても──何かを変えないといけないんじゃないか?という漠然とした切迫感は、映像で観ただけでも僕には伝わってきて、観終わった後にすごい割り切れないものが残ったんです。「じゃあ自分は何をするのか、何ができるのか」という問いがずっともやもやと残った。

 『月の剥がれる』の物語では、「人を殺してはいけない」という理念を突き詰めた結果、逆に多くの人が死に、「怒り」という感情を共同体として否定するというところまでいく。「戦争はよくない」「人を殺してはいけない」という僕らがあたりまえに思っている道徳の地盤が、場合によってはそこまでいくということを実験的に示している。「平和」という言葉を口にする以上、分かってなければいけないこと、分かっていたはずのことを突き付けられたという感じがして、僕は、昨今になって憲法改正の問題が浮上するより四年も前にこれが書かれていたということに、驚きました。しかもきちんと演劇作品として成立させた上でその問題を突き付けているというのが、この作品の魅力だと思います。


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