アマヤドリ本公演『月の剥がれる』出演者紹介! 
石本 政晶   神奈川県出身 1988年生まれ
2015年『悪い冗談』よりアマヤドリ参加、以降劇団員となる。
抜群の美的センスを出処とした捻れた性格が災いし、女子供にも容赦ない耽美主義かつ好戦的好事家。
しばしば稲垣◯郎に似ていると言われがちな、アマヤドリの個性派枠。
好きな食べ物は美男美女。
主な出演作は、リジッター企画『ミロウのヴィーナス』『誰がための笛は鳴る』など。

——『月の剥がれる』という作品についての石本さんの考えをお聞かせください。

 実は、最初映像で観たときには物語がよく分からなくて、その後台本を読んでみてもよく分からなかったんです(苦笑)。それが「ああ、なるほど、こういうことなのかな」と話の大筋が掴めるようになったのは、関連書籍を読んだり、チベットの方の焼身自殺について調べてみたりして以降のことでした。

 特にチベットの焼身自殺者のことですね。焼身自殺によって何かの抗議運動をする方というのは世界各国にいて、稽古期間に入る前からそのことを調べたり、或いは焼身自殺する人のライブ動画というのも観てみたりしてたんですけど……やっぱり、チベットの方は全然覚悟が違う。焼身自殺というのが自殺の方法でも最も苦痛が激しいとされているものだから、大抵の人は、最初は「俺は覚悟を決めてるぜ」みたいな勇ましい態度でカメラに映っていても、いざ火がつくと、のたうちまわったり、「火を消してくれ!」と叫んだりというふうになってしまうんですが、チベットの自殺者の場合は、本当に直立不動で、苦しんでいる様子をまったく見せずに、じっと、焼け焦げて絶命するまで静かなままでいるんです。そのすさまじいメンタリティは何なんだろうかと考えざるを得ませんでした。

 そうして実際にチベットで焼身自殺した方の遺書というのも色々読んだんですが、少なくとも僕には理解できないような信念の強さがそこにあらわれていた。彼らはまったく利他的に、自分が自殺した後もつづいていく世界、自分の死後の世界を生きるひとびとためにそういう死に方を選んでいる。でも、中国政府はそういう抗議活動を頭から突っぱねていますし、実際命を掛けたからってどうにかなるわけでもないんです。それでも、「自分のためではない、人のために死にます、ひとびとのために祈ります」と彼らは実行する。遺書のなかにも、正確な言葉は覚えてないんですが、「世界の友よ、真実から目を背けてはならない」というような言葉があって、……その、圧倒的に届くはずもないのに祈ろうとする、そのメンタリティがすごいな、と。

 『月の剥がれる』の劇中の台詞にも「叶わないから祈るんだ」というのがありますよね。チベットの方にかぎらず、世界各国で「人のために死ぬ、ひとびとのために祈る」という運動が今リアルタイムで起きているなかで、やはりどこか僕もそれらを人ごととして捉えてしまうところはあるんですが、しかし、それらを本当は人ごとではない、現に自分たちの身近な可能性として提示するという面が、『月の剥がれる』という作品にはあるんじゃないかと思っています。観る方にとっても、今世の中で起こっている、人ごとだと思って目を背けていた出来事や情報を踏まえた上で観ていただくと、まったく違う作品のように受け取られるのだろうなと。

 でも、じゃあ俳優としてどういうメンタリティでこれに臨んだらいいんだろうかというのは、今はまだ、すごく悩んでいることですね……。チベットの方のようなメンタリティに追い付かなければならないということでもないでしょうが、平和な日本で生活しているこの僕が、いかに真実味をもってこの戯曲をやれるか。今後の稽古期間の課題だと思っています。

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