アマヤドリ本公演『月の剥がれる』出演者紹介!   
毛利 悟巳 東京都出身 1991年生まれ
小さな頃からクラシックバレエを習っていたが、徐々に台詞に興味を持つようになる。
主な出演作は、劇団チョコレートケーキ「あの記憶の記録」、
アマヤドリ「太陽とサヨナラ」、劇団唐組「透明人間」など。

─『月の剥がれる』という作品についての毛利さんの考えをお聞かせください。 

 実は初演を観ているんですけど、正直内容をほとんど覚えていなくて。アマヤドリ自体もそのとき初めて観たので、ひたすら「美しい舞台だな」っていう印象で、「死」や「戦争」という重いテーマを扱ったものを観たという感じがしなかったんです。だから台本を読んで、あらためてこんなことが書かれていたんだと驚いてます。こんなに「美しくない」ことが書かれていたのかって。

 そして、今のわたしに身近な問題も含まれた作品だな、とも感じています。すごく現実的な内容だと思う。初演を観たときはどこか現実離れした、舞台上での美しさを実現した作品という印象だったのですが、それから数年経った今のわたしの目で読むと、とても身近に感じます。

 とくにナツという登場人物には、すごく共感できる。ナツっていうのは、兄弟が軍事的な、暴力的な何かにかかわっていくのを引き止める役ですよね。わたしの家でも以前、浪人中の弟のところに自衛隊募集の報せが来たことがあって、「今進路を迷っている方に!」「資格とか給与とかで有利な点がたくさんあります!」みたいなことが書かれていて、弟も、ふざけた感じではあったけれど「俺ちょっと自衛隊入るわ」とか言い出して、家族騒然となったんですよ。母親もわたしも「ほんと止めなさい」「浪人が大変なのは分かるけど、ちゃんと大学行きなさい」って言い聞かせて、それはそれだけの話で終ったんですけれど、家庭内にそういう事件があった上で『月の剥がれる』という作品に触れてみると、すごくリアルだなと感じる。友達の友達の友達ぐらいの関係だったら最終的には本人の判断に任せることでも、家族だったらどうしても止めて欲しい、譲れない、諦め切れないことってあるよなって思うので。だからナツのシーンは本当に共感できますね。

 具体的な想像力って大切だなって思うんです。ちゃんと想像することができないと誤った方向に行ってしまうこともあるのかなって。たとえば友達の友達の友達ぐらいの人が「戦争」にかかわることになったって言われても、そうか、そうなんだ、と感じるだけかもしれないですが、実際自分の家族がかかわるってことになったら、すごく「死」や「戦争」が肌で感じられるようになると思うんです。

 命よりも大切なものは無いと思います。だから私は戦争を指示する上部の人達の感覚が分からない。他人の命を犠牲にしてまでも欲しいものって何ですか?と聞きたい。人間ではない感覚になってしまう前に、様々な感情が麻痺してしまう前に、考えて欲しいと思います。人間の本来ある素敵な部分がずれそうになった時、元の場所に戻す、ということが演劇の役割の一つであると思います。

 『月の剥がれる』も、お客さんが肌レベルで感じられるような舞台にできたら、誰にとっても無関係じゃないお話だと受け取ってもらえるだろうと思います。だからこそ、作品として「楽しめる」ものにしなければいけないなと思います。

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