アマヤドリ2014三部作「悪と自由」のシリーズ vol.1
風姿花伝プロジェクト「プロミシング・カンパニー」特別企画ロングラン
『 ぬれぎぬ 』
2014/04/01(火)-2014/04/23(水)
@シアター風姿花伝
作・演出広田淳一
詳細はこちらまで!
□□アマヤドリ ロングラン公演
『ぬれぎぬ』出演者対談□□
劇団員同士、いろいろ語ってもらいましたっ!
今回は……【中村早香×渡邉圭介】
※ちょっと長いですが、どうぞお楽しみください……っ
“中村塾一期生”ですからね。僕は。
渡邉:僕は、2010年から劇団に関わってて。 次の6月で丸4年とかなんですけど、でもなんか、随分昔な気がしますね。
中村:でも、変わったよね。
渡邉:僕ですか?
中村:うん。 正直、『水』(※1)のときとかは、「落ち着きないな」っていう印象だったの。役者としてね。いまより若かったこともあるかもしれないけど。 だけどそれに比べて今は、「あ~、成長したな~この子は」っていう、親心です。
渡邉:それこそ“中村塾一期生”ですからね、僕は。なんか、通しとか、読み合わせの稽古があったときに、もちろん僕から聞きに行くことも多いんだけど、大体長文メールをもらうんですよ。 「今日はここがよかった」とか「ここが悪かった」とか。
中村:聞いてくるからね。
渡邉:「ここはわからないけど、こういうことが必要だったんじゃないの」とか。 長文のやりとりをするの。
――中村塾ってどうやったら入塾できるんですか?
渡邉:これはねぇ、大変入門制限が厳しいんですよ。まず、願書持ってコンコンコン…って扉叩くでしょ。それで一応扉は開けてくれて願書を受理してくれるんだけど、しばらくの間は体験レッスンで終わっちゃうのね。 何度も何度も通わないとだめなんですよ。 早香さんって基本すっごい謙虚だから、後輩に対しても積極的にダメだししたりするタイプじゃないんですよ。
中村:そうねぇ。
渡邉:だけど僕はそういうところ割としつこい人間なので、「どうすればいいんですか?」「僕の演技、どう思いました?」って一個一個聞いて。 そうするとある時から、長文のメールがもらえるようになって。 ただ、メールの前置きが、異常に長いんです(笑) 「おつかれさまです。まずは過密な日程のなか、本当におつかれさまでした。……どーちゃらこーちゃら……、差し出がましいようですが…私が気づいたことがいくつかあるので、あなたに伝えられればいいなと思いメールしました。」 本題に入るまでがひたすら長い。
中村:よくわたしのことを掴んでいるね(笑)
渡邉:だから、入塾してしばらく日がたつと、こっちも前置きすっ飛ばして読むからね。
中村:そう、ほんと長いの。「聞かなくても聞いてもどちらでもいいのですが参考になるようでしたら…」みたいな。
渡邉:そうそう(笑)で、あと、文末もちょっと長い。 「ま、私はそんな、大したものではないので、何をべらべら言ってるんでしょうね。深夜に長文失礼いたしました、
二人:「返信は、不要です。」
中村:(爆)
※1 『水』(再演)。2010年6月、再演。渡邉はこのときひょっとこ乱舞初参加。
「本番はアドレナリン出るから肉体的に疲れててもなんとかなる。だから、本番まで体力を温存しておく必要はない」
渡邉:入団当時から、手を抜いてるつもりって全くなかったんだけど、そういうのって、気づくか気づかないかって問題だったりもするじゃないですか。だから、「ここがこういう風に雑なんだよ」って教えてもらって初めて気づく、みたいな感じで。 そういう意味では、早香さんの姿を観てるってのはある。 去年の雨天決行(※2)の時に、“本番前の過ごし方”みたいな話になったじゃないですか。
中村:“本番前の過ごし方”?
渡邉:僕が、「頭もすごくはっきり起きてるしとっても集中してるんだけど、身体がふわふわしちゃうんですけど、これってどうしたらいいですか?」って早香さんに聞いて。そしたら「それは、身体が頭の集中に追いついてないからじゃないかな。とにかくへとへとになるまで身体を動かしな」っ言われて。「本番はアドレナリン出るから肉体的に疲れててもなんとかなる。 だから、本番まで体力を温存しておく必要はない」って。そういうのも気づくか・気づかないか論じゃないですか。早香さんからしたら「んなこた言われないでも気づけよボケ」って感じなのかもしれませんけど。
中村:あたしそんなこと言ってないよ(笑)
渡邉:言ってないけど(笑)でもそうやって一個一個学んできたっていうのはありますかね。
いざっていうときに芝居の本気の悩みを言えるのは広田さんだけかも。
――今、早香さんに物申す人物はいるんですか?
中村:広田淳一か、鈴木忠志さんか。
渡邉:あぁ…。
中村:そういう風にはなってきちゃってるよね。絶対みんな、思ってることあるはずなんだけど立場的に、言えないんだと思うんだよね。年も下だし。誰もなにも言ってくれなくなってしまうよね。やだあ、もう私、化石みたい。
渡邉:何言ってるんすか。でも、広田さんとももう長い付き合いですね。
中村:あたしが18歳のときからだから…15年か(笑)
渡邉:15年を共にした人なんていないでしょ。
中村:そうだね、親ぐらい。 でもねぇ、意外とちゃんと、距離がある。だから私たちのことよく知らない人とかの前で電話してたりすると、すごい驚かれるもん。「え、15年も一緒にいて、そんな敬語とかちゃんと使ってそんなにちゃんと喋るの?!」って。
渡邉:15年も一緒にいたら、友達みたいにもなっちゃいますよね、普通は。
中村:2歳しか変わらないしね。 でもあたしのなかでは、演出家は演出家だから。距離が縮められないっていうか。それが礼儀だと思ってるし、縮めたらおしまいかなって。縮められるくらいの人になっちゃったら、なんか、やだ。演出家として尊敬できなくなったら、それはやっぱり、一緒にできない。
渡邉:なるほど。なんか分かる気がする。
中村:でもある意味、とても近いとも思うよ。
渡邉:ある意味っていうのは?
中村:いざっていうときに芝居の本気の悩みを本気で言えるのは広田さんだけかも。他の人にも言えるけど、私のしっくりくるアクションをくれるのは、やっぱり広田さんだな。
※2 雨天決行:アマヤドリがスタジオ空洞で展開する小規模公演。2012年は『うそつき』『千両みかん』『屋上庭園』『幸せはいつも小さくて東京はそれよりも大きい』の4作品を上演。
誰かみたいになりたいっていう願望がないんですよ、僕。
渡邉:『うれしい悲鳴』の初演(※3)のときの映像を見たんですけど、やっぱりまだまだ自分が思い描いている演技のイメージと、結果的に外に出ているものの誤差があったんですよ。で、良い俳優は、やっぱりそれが少ない気がして。それを、ちゃんと埋められる様にしたいですねぇ……。もっと漠然なことを言えば、指先までちゃんと密度があるような演技。そういうパフォーマンスをやりたいなって思いますね。
中村:そういうことが体現できているなって思う人はいるの?
渡邉:もちろんひとりは早香さんだし、あとは笈田ヨシさんとか。SPACの阿部さんとか。他にもたくさんいるんですけど……。
中村:今、圭介が名前を挙げた人って素敵な方ばかりだけど、それぞれタイプは全然違うじゃない? どういう風になりたい、とかってあるの?
渡邉:うーん……。誰かみたいなりたいっていう願望はないんですよ、僕。 憧れる人がいても、その人みたいになりたい、とは思わない。 ある種不敬な言い方なのかもしれないけど、僕はその人じゃないから。だから誰かみたいになる、なんてことは早々に諦めてるかも。所詮猿真似になっちゃうから。
※3 2012年3月、初演。ひょっとこ乱舞の最終公演となる。
だってパンダと芝居したら楽しいでしょ?
中村:課題……。すっごいたくさんあるよね、ほんと。だって私……、お芝居できないんだもん。
渡邉:なにいってんすか(笑)
中村:芝居、できないんだよ、あたし。演技が下手なの。なんか今までは、器ばっかり広げようみたいな作業しかしてこなくって。例えば、しっかり立てるようになろう、とか、しっかりした声を出せるようになろう、とか。そういうことは、多分、それなりに考えてやってきた。けれども、戯曲とちゃんと向き合って、この役の感情はどうだろうとか、そういうことがもう全然できないし、言葉を交わすみたいなこともすごい苦手。私ね、例えば、良い楽器になろうとしてやってきて、だけど演奏ができないの。いま、そんな感じ。
渡邉:いや、そんな感じしないですけどね。だって僕、早香さんと読み合わせしてる時がいっちばん楽しいですもん。
中村:それは、私が物珍しいからだよー。だってパンダと芝居したら楽しいでしょ?
渡邉:おいおいおい(笑)
人生、勝てないことがわかったけど、それでも勝ちたい。
渡邉:だから、もう、この人の努力の影を見るもんね。 それを支えてるのは、悔しさなんですよね。
中村:だってもう、勝てるどころか追いつけないんだもん。ただただ悔しくて。 それだけだもん。 ほんとに。 勝ちたい。 人生、勝てないことがわかったけど、それでも勝ちたい、いま。
渡邉:早香さんってそういう想いを周りに出さないタイプじゃないですか。 出さないけど、これは広田さんも言ってたけど、いっちばん負けず嫌いなの、この人。
中村:下手にプライド高いんだよ、あたし。 大昔はね、恥ずかしいんだけど正直な話、誰にでも勝てるって思ってた。 だけど、あれ、勝てないぞってことが結構最初の頃にわかって、ずっと負け続けて、頑張っても、勝てない。 ほんと、悔しかったね。
渡邉:でも僕は、他の誰と一緒にやれるより、早香さんと同じ劇団にいるってことを誇りに思いますけどね。 早香さんは何度言っても信じてくれないんだけどね。尊いことだと思ってる。
――休みがあったら何したいですか?
渡邉:麻雀やりたい。 とにっかく麻雀やって、あと温泉とか行きたい。
中村:もししばらくの間休みを頂けるのであれば、外国に行ってヨガのインストラクター資格をとって、なんか野菜だけを食べたりして暮らしたい。 なんかねぇ、シンプルに行きたい。あっ、修道女、修道女になりたい。
渡邉:それは………、劇団会議で話しましょう(笑)